両親が亡くなった実家に、ほかに住む親族もいない場合など、空き家となった実家を相続することがあります。しかし、不動産は空き家のまま放置しておくと、さまざまな問題が発生します。今回は、空き家の放置により生じるデメリットとそれを解消する対策について紹介します。
1.いくつもある。空き家を放置している場合のデメリット
不動産を所有している場合、所有者が居住していなくても、土地や建物は原則として固定資産税や都市計画税の課税対象となります。所有者は毎年これらの税金を納めなければなりません。
固定資産税の税額は固定資産税評価額に標準税率の1.4%(自治体により異なる場合があります)を都市計画税の税額は固定資産税評価額に最高0.3%(制限税率)を乗じて算出されますが、住宅用地については特例が適用され、減税されます。
具体的には、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準額について、固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に軽減され、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は固定資産税が1/3に、都市計画税が2/3に軽減されます。しかし、空き家の状態で所有し、適切に管理せずに放置した場合には『特定空き家』に指定されることがあります。特定空き家の土地には、この住宅用地としての軽減措置が適用されないため、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍に税負担が増えることになります。
また、空き家は老朽化の進行により家屋の資産価値にマイナスの影響があるだけでなく、台風などの自然災害での倒壊の危険性も高まります。さらに、空き家には放火などの犯罪やトラブルが起こるリスクがあり、管理の状態次第で所有者に賠償責任が生じることもあります。これらの理由から、空き家の放置は社会間題となっています。
2.空き家となった実家を相続したら?放置せすに売却または賃貸を。
このようなデメリットを解消するには、主に売却する方法と賃貸物件にする方法があります。
まず、空き家の使い道がない場合は、早めの売却をおすすめします。家屋に十分な資産価値があるなら家屋と敷地を売却できますが、築年数が経過した家屋付きの土地の売却はむずかしいため、家屋を解体し更地にしてから土地を売却するという方法もあります。このような場合、売却することで『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』を受けられる可能性があります。この特例は、相続開始直前において被相続人のみが居住し、所有していた家屋およびその敷地を、相続人が相続により取得し、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合、売主側で家屋の除却や耐震改修する等の一定の要件を満たすときは譲渡益から3,000万円まで控除を受けられるものです。
なお、税制改正により2024年1月1日より要件の一部が変更になり、譲渡後に買主側が一定の要件のもと、家屋の除却や耐震改修をした場合でも適用対象となることとされました。また、不動産をそのまま所持していたい理由がある場合などには、不動産仲介業者に依頼し、空き家を賃貸物件として貸し出す方法があります。家賃収入を得ることができ、特定空き家の指定や空き家放置に伴う多くのデメリットも解消できるでしょう。
空き家の放置により起きた問題を解消するには、相続人に売却や賃貸などの負担が伴います。空き家として放置しないためにも、相続時の実家の取り扱いについて、相続が開始する前から家族で話し合っておくことが大切です。